2013年 06月 12日
糸島の矢野さん 2013年6月
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夏目漱石「夢十夜」には、忘れられない話があります。
仏像を彫っている運慶を見て、
 仏像をノミで作るのではない、
 木の中に埋まっているのを、ノミと槌で掘り出しているのだ、
という下り。
そのような光景を梅雨空の下、福岡で見てきました。
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福岡県糸島市在住の木工作家・矢野義憲さん。
昨年の11月に、原宿 Style-Hug Gallery (スタイルハグギャラリー)で、
余宮隆+矢野義憲二人展が開催されいて、
そこで余宮さんに紹介されました。
「糸島の工房にカメラ持っておうかがいしてもよろしいでしょうか?」
「いつでもどうぞ」
二つ返事でご快諾いただきました。
それから半年が過ぎようやく、糸島に行く機会にめぐまれました。
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福岡空港から電車で45分ほど。
福岡市と唐津市の間に糸島市は位置しています。
玄界灘のほとり、静かな美しいところです。
そこに矢野さんの工房はあります。
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色々なお話しをうかがいました。
素材選びがとても大切であること。
どんな木の種類を選ぶのか、どれぐらい乾燥させるのか。
3年、5年、それ以上ずっと乾かしている木もありました。
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「古い、いい木は、ほとんど手をいれません。それでも形になります。
 でもそうでない木は、たくさんたくさん手を入れてあげます。
 そうすることで形になります」
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丁寧に彫って、また乾かして、翌日に彫って。
その途中で、乾燥割れしてしまうことともあるそうです。
大量生産することができません。
焦らずあわてず、そして迷わず。
ただ真っ直ぐに、木を削る音が工房に響いていました。
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矢野さんが木を彫っている姿は、迷いがなく力強く、
大きな身体を丸めて、どんどん木の中に自らが入っていくようです。
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木工作家と写真家は、似ているところがあると思いました。
写真は引き算で、絵画は足し算です。
何も考えずにカメラを構えてシャッターを押すと、
必要以上にたくさんのものが写ってしまいます。
そこから必要なものを整理して削っていく、引き算の考え方です。
絵画は真っ白なキャンバスにゼロから描いていく、足し算の考え方です。
土を練って作り上げていく陶芸は足し算、
木を削っていく木工は引き算。
そんな気がしました。
(この話を翌日、陶芸家の余宮さんにしたら、
 その通りだとうなずかれていました)
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矢野さんの作品です。
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今年は6月に広島
9月に福岡
12月に神戸
で、作品展があるそうです。

矢野さんの公式サイト
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短い滞在でしたが、大変お世話になりました。
またいつの日か、うかがえればと思います。

この日に撮った写真のスライドショーはこちらです。
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by moonisup | 2013-06-12 21:42 | travel


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