2005年 06月 01日
1991年の初夏のとある日。 友人に紹介された編集部に打ち合わせに行くと、 そこのギャラは僕を失望させる金額で、 「どうして往きと帰りでドアの重さが違うのだろう」 と思いながら、そのビルを後にした。 その頃の僕は、人生をゲームと考えていて、とても貧乏だったのだけど、 日々を楽しく過ごしていた。 他に客はいなかったので、僕はそちらを選んだ。 あまりにも天気がよかったから。 ストレートで飲むには苦すぎるアールグレイを飲んでいると、 隣のテーブルにきれいな女性が座った。 喫煙席に来るのだから、当然彼女は煙草を吸うのだと思い、 僕はカップを持って中の禁煙席に移動しようとした。 ところが彼女は煙草を吸わず、それどころか、 ハヤカワノベルズの「a prayer for the dying」を持っていて、 それは当時絶版で、僕はあちこちの古本屋で探していた。 僕は見知らぬ女性に話しかけるなんでできる性質ではないのだけど、 「その本、ずっと探しているのです、どこで手に入れたのですか?」 「霞町のアンティークショップでした」 「そうですか、」 「さしあげますよ、ちょうど読み終えたところです」 「でも、それはあなたのでしょう」 「私のだったのです」 僕は彼女のセイロンとスコーンの代金を支払うだけで、本を手に入れることができた。 なんて嘘八百を書きたくなるのは、 ポール・オースターの「トゥルー・ストーリーズ」を読んでいるからです。 (まだ読んでいる途中です) :->
by moonisup
| 2005-06-01 20:56
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