2005年 06月 11日
天使
僕が天使を初めて見たのはいつだったろう。
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 僕が天使を初めて見たのはいつだったろう。
特別なことではなく、誰もがそうであるように、きっと風邪をひいて熱をだした時だと思う。
子供の頃、冬の木造家屋は、
ストーブの匂いと、すきま風の匂い、たくさんの本からはみだすカビの匂いで満ちていた。
熱で身体のふしぶしが痛く、布団のなかで、ばたばたと動いていた。
自分が情けない苦しい声を出しているのがわかっているのだけど、
それはとめられなかった。
いつのまにか眠りにおちて、悪夢を見てうなされ、汗びっしょりで目覚めると、
目の前に天使がいた。
それは光り輝ききれいなのだけど、触れることもできず、そして、音も匂いもなかった。
天使はただいるだけで、何もしてくれはしなかった。
日頃、信心深く何かに祈りを捧げることなど、
まったくないのだから、それは当然のことだ。
天使はただ、そこにいるだけ。
何もしてはくれない。

 次に天使に会ったのは、中学2年生の時。
学校の帰り道、英語の先生の家に届けものをすることになった。
霧のような雨が降っている夕方、一日の湿度を吸い込んだ学生服がいっそう重い時間。
ソビエト大使館を越えて左に曲がり坂道をやりすごして、曲がりくねった道を通り、
狸穴公園の脇を通ったとき。
公園の向かいにある洋館の門が開いて、小さな女の子が出てきた。
当時の僕と同じか、少し下ぐらいの年齢なのだろうか。
コバルトブルーのリボンで金色のソバージュをまとめていて、とび色の瞳。
白いワンピースを着ていた。
ワンピースよりも真っ白い肌。
ソビエト大使館の家族なのだろうか。
あまりの美しさに僕は見とれていると、天使はにっこりと微笑んだ。
そう。
天使は何もしない、ただそこにいるだけ。
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by moonisup | 2005-06-11 23:59 | photo


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