2005年 11月 28日
はじめてのミルクティー
 多分、今から30年以上前のお話。おぼろげな記憶です。
どこまで正確なのかも、もうわかりません。
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眠りから覚醒した時、僕は母が運転する車の後部座席で、毛布にくるまって眠っていた。
外はまだ真っ暗だった。
「まだ寝ていなさい」
振り返ることなく母は言った。そして、再び僕は毛布にくるまって眠った。
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車のエンジンの音が止まって目がさめると、あたりは明るくなっていて、でも、真っ白で。
霧がただよう中、母と手をつないで歩くと、
湖(池だったかもしれないけど、大きな水辺)が見えてきた。
「さむいよー」
と言うと、母は自分がまいていたスカーフを、僕の首にまいてくれた。
(その朝は、スカーフがあたたかい、と初めて知った朝でもあった)
朝もやの中に木でできた家(ログハウスのような感じ)が見えてきて、
そこに、人が二人立っていて、僕たちを出迎えてくれた。
近づいてみると、とても背の高いおじいさんとおばあさんで、母は二人にハグとキスをした。
3人は英語(らしき言葉)であいさつをしていて、おまけのようにいる僕に、
背の高いおばあさんがしゃがんで、僕を抱きしめてほっぺたにキスをしてきた。
僕はいやだったのだけれど、
「ちゃんとごあいさつをしなさい」
と母に言われたので、おばあさんのほっぺたに僕もキスをした(いやいやだったと覚えている)。
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小屋の中にはいると、薪ストーブがあって、とてもあたたくていいにおいがした。
ホットケーキと紅茶が目の前に運ばれてきて、
僕は母の顔をうかがうと
「おたべなさい」と言われたので、「いただきます」と言った、もちろん日本語で。
紅茶にいれるレモンがない、と母にささやくように言うと、
おばあさんが、何か英語で言ってきた。
母の顔を見ると、
「レモンではなくてミルクをいれなさい、って。」
僕は牛乳が苦手な子供だったので、何もいれないで紅茶を飲んだ。苦かった。
お砂糖もなかったのだ。
そんな僕に、そのおばあさんは、ミルクを入れてスプーンでかきまぜてくれた。
こわごわとティーカップを口に運ぶと、とてもやわらかくて、なめらかな味がした。
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そのおじいさんと母は、たくさんの書類を広げて、何か仕事の話をしていた。
退屈な僕を見かねたのか、おばあさんが、紙とペンを持ってきてくれた。
トリの羽がついているペンというのをその時に初めて見た。
インク壺にいれて、絵を描いてくれた。
その絵は、外国の女の子の絵で、人形みたいだった。
あからさまに退屈な顔をすると、おばあさんは、ペンを僕に貸してくれた。
たぶん、とってもへたくそな仮面ライダーの絵を僕は描いたと思う。
気がつくと、母はいなくなっていた。僕には何も言わずに。
そのおじいさんは、少し日本語が話せたのだけど、おばあさんは、まるきり話せなかった。
でも、僕はそれから1回の朝食と2度の昼ご飯と夕食を、そのおばあさんと一緒に過ごした。
2日目の夜、母の車のエンジンの音がきこえると、僕は家をとびだして、母のもとにかけよった。
暗やみで、母の顔は見えなかった。
でも、母はまたスカーフを僕の首にまいてくれた。
スカーフは母のにおいがした。
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by moonisup | 2005-11-28 23:26 | tea


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