2008年 03月 12日
好きなもの・4 郵便屋さんのバイクの音
a0003650_22204850.jpg
 ぶおー、がたん、ばばばば、すとん、  ぶおー

低排気量の単気筒バイクの音が、いつも同じ時間に聞こえる。



a0003650_22212136.jpg
デジカメもインターネットも携帯電話もなかった頃。
僕の部屋は、始終真っ暗だった。
遮光カーテンと黒紙で覆われた一条の光すらさしこまない部屋の中で、
引き伸ばし機にむかい、たくさんの写真を現像していた。
僕はイルフォードというイギリスの印画紙が大好きで、
金もないのにそればかり使っていた。
その頃は、紅茶の銘柄も今ほど知らなくて、アールグレイだけを飲んでいたと思う。
a0003650_22214296.jpg
あの頃、24時間はすべて僕のものだった。
通勤もなく、仕事以外の時間も写真ばかり撮っていた。
カラーの撮影はラボまかせだったけど、
モノクロの仕事は自分でプリントしていいた。
たいした仕事もなく、暇だったのだ。
カラーの場合は、御成門にあるラボに頼んでいた。
現像待ちの2~3時間、近くの喫茶店ーカフェではない、蝶ネクタイマスターのいる店ーで、
図書館から借りた文庫本を読んでいた。
当時からテレビはまるで見なかったし、一月に30冊は読む時間があった。
デジタルになってからは、1冊も読まない月があるなんて、
こんな未来はまったく想像できなかった。
a0003650_2222357.jpg
部屋の暗室にこもってしまうと、時間の感覚は麻痺した。
時計の短針はまるで分針のように進み、3時間4時間はあっという間で、
窓の外を見ないと昼なのか夜なのかもわからなかった。
CDは最長でも72分で、気がつくと止まっていて、
新しいディスクを置く時間も惜しかったので、部屋は静寂だった。
そんな時に、郵便屋のバイクの音が、時間を教えてくれた。
同じようなバイクでも新聞配達のバイクとは明らかに音が違った。
昔から電話が苦手だったので、外と僕を結ぶものは手紙だった。
郵便ポストに入っているのは、ほとんどがダイレクトメール、
そして請求書。
たまに遠方の友人から来る手紙が嬉しかった。
あの頃の僕は筆まめだった。
プリントしたモノクロ印画紙の裏に切手を貼って、よく投函していた。
メッセージなんかは何も書かないで、モノクロ写真だけを送っていた。
a0003650_22222746.jpg
今となっては、ほとんどの用件は電子メールですんでしまう。
請求書すらPDF添付のところが多い。
ポストを開いて、特別な手紙が入っていることはほとんどないけれど、
たまに届くカードは、とても嬉しくて事務所のコルクボードに貼っている。

 ありがとう、ちゃんととどきましたよ。

返事を書かなくてはと思っているのだけど、気がつくと5時を過ぎていて、
今日も郵便局に間に合わなかった。
:->

by moonisup | 2008-03-12 22:22 | my favorite things


<< 根本タケシ 写真展 「深川散歩3」      PIE 2008 セミナー「こ... >>