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2008年 03月 12日
![]() 低排気量の単気筒バイクの音が、いつも同じ時間に聞こえる。 ![]() 僕の部屋は、始終真っ暗だった。 遮光カーテンと黒紙で覆われた一条の光すらさしこまない部屋の中で、 引き伸ばし機にむかい、たくさんの写真を現像していた。 僕はイルフォードというイギリスの印画紙が大好きで、 金もないのにそればかり使っていた。 その頃は、紅茶の銘柄も今ほど知らなくて、アールグレイだけを飲んでいたと思う。 ![]() 通勤もなく、仕事以外の時間も写真ばかり撮っていた。 カラーの撮影はラボまかせだったけど、 モノクロの仕事は自分でプリントしていいた。 たいした仕事もなく、暇だったのだ。 カラーの場合は、御成門にあるラボに頼んでいた。 現像待ちの2~3時間、近くの喫茶店ーカフェではない、蝶ネクタイマスターのいる店ーで、 図書館から借りた文庫本を読んでいた。 当時からテレビはまるで見なかったし、一月に30冊は読む時間があった。 デジタルになってからは、1冊も読まない月があるなんて、 こんな未来はまったく想像できなかった。 ![]() 時計の短針はまるで分針のように進み、3時間4時間はあっという間で、 窓の外を見ないと昼なのか夜なのかもわからなかった。 CDは最長でも72分で、気がつくと止まっていて、 新しいディスクを置く時間も惜しかったので、部屋は静寂だった。 そんな時に、郵便屋のバイクの音が、時間を教えてくれた。 同じようなバイクでも新聞配達のバイクとは明らかに音が違った。 昔から電話が苦手だったので、外と僕を結ぶものは手紙だった。 郵便ポストに入っているのは、ほとんどがダイレクトメール、 そして請求書。 たまに遠方の友人から来る手紙が嬉しかった。 あの頃の僕は筆まめだった。 プリントしたモノクロ印画紙の裏に切手を貼って、よく投函していた。 メッセージなんかは何も書かないで、モノクロ写真だけを送っていた。 ![]() 請求書すらPDF添付のところが多い。 ポストを開いて、特別な手紙が入っていることはほとんどないけれど、 たまに届くカードは、とても嬉しくて事務所のコルクボードに貼っている。 ありがとう、ちゃんととどきましたよ。 返事を書かなくてはと思っているのだけど、気がつくと5時を過ぎていて、 今日も郵便局に間に合わなかった。 :->
by moonisup
| 2008-03-12 22:22
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